『青のフラッグ』第45話 あらすじとネタバレ感想~愛ゆえに人は苦しまねばならぬ

ジャンプ+にて連載中、KAITOさんの
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「第45話」
マミと真澄と3人で話す中、太一とトーマの関係を自分に当てはめてみた二葉。
彼女からすれば、大切な友達は真澄になる。
もしも彼女から今告白されたら自分はどうするか。

そう口にする最中、聞いていた真澄が突然立ち上がり話を遮ります。
その頃、祥子と彩香が去った部屋で、熱帯魚を眺める太一。

お茶を入れ一息つきながら、健助が女は何でああもまくしたてられるもんかねと愚痴をこぼします。
それに対し、脳の作りの違いが有るんだろうと答えるシンゴ。
そんな与太話に付き合う気分でもなく、太一は自分が呼ばれた理由を尋ねる事にしました。
言われて、二人で見つめ合う健助と津吾。

自分が矢面に立たされ、何を言おうとしていたのか聞こうとしていたのか、
頭を掻きながら考えます。

そして彼から出てきた質問は、もちろんトーマとの事。
彼らしい、漠然としながらも直球の質問を投げかけます。

どうと言われても。
漠然としすぎている質問に答えが出ない太一。
逆に二人はどうするのかと、問い返します。

太一の問いを強く聞き返す健助。
先ほどトーマの真実に対し我慢出来ないと言っていた本人ですが、
あくまでそれは自分の感情で、
どうするかどうなるかはトーマ次第。

再び頭を掻き、考えながら会話を続ける健助。
トーマを例外に出来たとしてもこれからは気を遣うとしても、
自分が嫌なモノは嫌だしすぐにそれを変える事は出来ない。
とはいえ、今まではトーマが自分たちに合わせ、それを知らないでいた。
その事実を知ってしまったからには今まで通りとはいかない。
そう語る健助。
しかし、それに対して津吾から思いもよらぬ発言が。

驚く健助に笑いながら電話一本と話す津吾。
仲直りしたいならすぐに謝るが吉だと言うも、それが出来れば苦労しない。
広めたのは俺じゃないと言い訳する健助ですが、
少なくとも自分がしたことを悪かったと思ってるだろうと図星を突かれてしまいます。

行動する前に考えろと言った本人が何を言うのかと言いながら、
ふと気づいてしまう健助。
この状況はマズイのではないかと。

トーマに聞けよと呆れる津吾ですが、健助としては真剣な悩みなわけで
太一に「そういう気ではないから」と言ってほしい彼がフォローを求めますが、
太一本人はその話を振られてもリアクションが出来ない。
マミが気にならない事を健助が気になるのと同じだしなと話す津吾からすれば、
先ほどの太一の状況の方が二葉にどう思われるのか心配だと矛先を変えます。

先ほどの状況を思い出し、慌てふためく太一。
津吾はあっけらかんとした様子で、彼女は嫉妬する系?と太一で遊びだす始末。

自身の脳の許容量が限界を突破したのか、突然めんどくせぇと声を張り上げて倒れ込む健助。
そこまで気を遣えるかと、喚き散らす結果になってしまいました。

そして、二葉の話を遮る様に立ち上がった真澄。
二人に目もくれず、用事を思い出したから先に帰ると歩き出しました。

じゃあと立ち上がる二葉を強く呼び止め、まだ話してなと一人歩き始めます。
動けない二葉に対し、その手を引っ張って止めるマミ。
しかし、振り向いた彼女の表情を見て、マミも動けなくなってしまいます。

何でもないからと至極平静を装おうとしている真澄。
しかしそうは見えない彼女の名を二葉が呼びますが、彼女は語気を荒げ遮ります。

驚く二人にゴメンとだけ呟き立ち去った真澄に戸惑い、自身の非を考える二葉。
彼女自身の理解の外で起きた事に思考が追い付かず、ただただ震えるばかり。

それを見たマミは、先ほどの流れから何が原因なのかを考えます。
そして一つの仮説に行きつく。

ハっと、二葉を見つめるマミ。
何か気づいたのか、縋る様に見つめる二葉にそれを伝える事は出来ず。

真澄をそのままにしておくことも出来ないマミは
二葉に詫びを告げながら彼女を追いかけて行きます。
もちろんの事ながら、逃げる真澄。
待てこらと大声を張り上げながら、マミは逃げる彼女を必死で追いかけるのでした。

男たちは解散し、津吾と太一の二人は帰路に立っていました。
トーマも厄介な奴に好かれたものだと呟く津吾。
健助もマミも我が強く不器用で融通が利かない。
もう少しうまく立ち回れれば生きやすくなりそうなものなのに。
結局自分たちが喋ってばっかりだったけどと言いつつ、誘いに乗ってくれたことを感謝する津吾。
彼に対し、太一は疑問を投げかけます。

怒って帰ってしまった彼女はあ大丈夫なのかと心配する太一は、
自分が「うざい」とか言われて帰られたらと心中穏やかでない様子。
付き合ってることも知らずそうも見えていなかった。
むしろマミとの方がお似合いに見えていた。
太一なりに気を遣っているのか、しどろもどろに話を続けますが、
津吾はそんな彼につい笑いが出てしまいます。

友人か恋人か。
健助なら間違いなく恋人を取るだろうと語る津吾ですが、
自分ならと言いかけた所でその口が止まります。
少し考え、反対に太一に問うてくる津吾。

戸惑う太一に対し、彼は矢継ぎ早に話を続けます。

話に追いつけず、放心状態になってしまった太一。
津吾は急にとぼけて、話を切り上げてしまいました。

話を有耶無耶にして去ろうとした津吾でしたが、
トーマに対する思いだけはしっかりと彼に伝えるのでした。

そして、二葉から逃げる様に去っていった真澄。
彼女の真意を問うため、マミが追いかけます。

邪魔くさそうに何なのと言う真澄に対し、
さっきの態度こそ何なのかと返すマミ。
しかし真澄はその問いに答えることなく、再び立ち去ろうとします。

悪かった、何でもない。
先と同じ言葉を並べ歩き出す真澄に、何でもなくないからと切り返すマミ。
問い詰めようとしますが、往来には同じ学校の生徒も多く。

マミは無視しようとする真澄を引っ張り、人通りの少ない脇道へと連れ出します。
迷惑がる真澄と対峙し、自分が気づいた彼女の気持ちを確かめる。

問われた真澄は少し間を置き、だったら?と返答。
その先を考えていなかったのか、マミは当惑の表情を浮かべます。

二葉に言うのかと続けて問う真澄。
マミにしてみればそんなつもりはないのですが、
じゃあ何のつもりなのかと問われ、先ほどの態度を言及することに。
アレはひどいのではないかと話し始めたマミでしたが、
彼女の言葉は真澄の心を深くえぐります。

一緒にしないでと反論する真澄。
言いたいことを言えて自分が正しいと胸を張って言える人間に
言えない人間の気持ちなんてわかるはずがない。

キッパリと、彼女の言葉を否定する真澄。
しかし、マミはその言葉を更に否定します。

分からないなんてお互い様。
自分が特別な存在だとでも思っているのか。
自分で自分を普通じゃないといって「普通の人間」を作り上げている。
同じ境遇でない人間を違うと、分からないと言っているのはどっちなのか。

自分の考えをそのまま否定する言葉に真澄は反感を覚えますが、
マミの言葉は止まりません。
結局は勝手に妄想して被害者面して、
自身が見下している「普通」なんて言葉を並べる人たちと何ら変わらない。
我慢が出来ず、私の何が分かるのかと大声を張り上げる真澄。
何も知らないくせに、何もわかってないくせにと責め立てますが、
既に売り言葉に買い言葉。

遂には互いに怒鳴りあいながら手を出す始末。
が、いつからかマミの言葉は向かい合う真澄だけに向けられておらず。
気を使えるわけがないと嘆くマミは、自分だって気づきたかったと真澄にしがみつきます。

分かってほしいなら、あんな顔をするなら自分だって分かりたい。
同じでなければ理解も共有も出来ないと言われても、同じにはなれない。

自分だってなりたい、でもなれない。
感情のままに叫びながら真澄に詰めよる。
しかし、その真澄すらももう感情を抑えることが出来なくなってしまいました。

大粒の涙をこぼし、人前も憚らず、
何でと嗚咽を繰り返しながら泣き出す真澄。

泣きながらも、お互いにぶつけ合う二人。
その感情は収まる所を知らず、ただただ涙になって流れ続けるばかり。

大事なだけなのに、壊したくないだけなのに。

真澄たちに追いつけなかった二葉はトーマから貰ったキーホルダーを眺めながら、
駅で一人思いを馳せるのでした。

感想
一月振りの『青のフラッグ』。
突然真澄さんに向けられたど真ん中ストレート!となった前回でしたが、
真澄さん自らバッターボックスから降りる形で回避となりました。
自分個人からすれば自分の好きな人が自分を恋愛感情面でどう思っているのかを聞ける機会というのはチャンスだと思うのですが、
真澄さん自身は自分の気持ちを隠して友達として付き合っている事に後ろめたさを持っている訳ですし、
拒否拒絶しか想定出来ないんでしょうねきっと。

二葉もそんなたらればの例え話でも本気で考えて本気で自分の気持ちを言うでしょうし、
そもそも真澄の気持ちに何かしらでも気付いていればソレを本人のいる前で話し出したりしないでしょうし、
素直な二葉の気持ちを知る絶好の機会では有ったんですけどね。
「正直無いわ~」とか言われたら真澄さんその場で倒れこみそう(笑)
しかしまぁあからさまな逃亡で、マミに気づかれてしまいましたね。
マミさんの追いかけ方がもうヤンキー感全開じゃない。
元からそういう子ですけど。

真澄からすれば「普通の人間」に自分の気持ちはわからない。
「普通」というのは異性愛者を指す訳で、トーマの話を今更考えてる人間たちのことを指します。
その中にはケンスケの様に過去のトラウマから認めない者もいれば、
ショーコたちの様に容認し許容する人間もいる。
ただ、真澄からすれば「そういう討論や議論を『同性愛者』を主軸に繰り広げている」という
その行為そのものが、自分たちと世間を隔てているのだと理解している。
でもそれはマミの言う様に「同じじゃない」から起こる話であって
隔てているのではなく自分たちなりに分かろうと、歩み寄ろうとしているということ。
当人たちを知らず侮蔑し嘲笑する人間は別としても、
真剣に考える人たちも一まとめにして突き放すのは確かに同じ穴の狢。
自分たちを特別扱いしろと言っていると言われても仕方ない。
明希子さんからも言われていたのにね、相手がどう思うかはどうしようもないって。

まぁねぇ、言われて理解してしっかり出来るならそれに越した事はないけども
それが出来ないのが人間で青春なのよね。
感情のぶつかり合いって素敵。
最後、抱きしめようとするマミと嫌がる真澄といった感じの応酬がいいわー。

違うと拒絶するのは簡単、嫌いと言えばいいだけ。
でもそれを「そうじゃないんじゃないか」と少し踏み込むだけで世界は変わるもの。
もちろん真澄だって分かってほしいと思っているでしょうし、
マミだってケンスケだって二葉だって分かりたいと思っている。
ただそれが何かを壊すかもしれないという恐怖が、その足を進ませない。
何年かけて積み上げても、崩すのは一瞬。
そうなってしまってはケンスケの言う様に今まで通りとはいられない。
その変わってしまった関係が吉と出るか凶と出るかというところでもあるんですけど
当人が簡単にそんな博打打てませんわな。

「同じじゃない」から分かってもらえない。
「同じじゃない」から分かりたい。
人間関係なんて総じてそんなもんだと思います。
「皆違って皆良い」のは、その違いを楽しむことが出来るからです。
それを達観出来ているのがシンゴのような気がしていましたが、
彼は彼でなんかおかしい。
友人と恋人、どちらを取るのか。
それはもちろん人によって違うし正解もない問いなのですが
もしかしたら彼自身、その答えが出せない人間なのかもしれません。

マミに対するトーマの態度に苛立ちを覚えたりもしていましたので
人に対する感情の希薄、という訳ではなさそうですが
もしかしたらアセクシャルなのかもとか思ってしまう。
マミの親友として居続ける彼ですが、そういう感情をマミに抱かなかったのか抱けなかったのか。
なんて話にも繋がってきますねこうなると。
とはいえ、もしかしたら太一に対して「お前の信じるお前を信じろ」と言いたかっただけなのかもしれませんが。
太一くん基本ブレッブレやし、今回もトーマの話をしに来てるのにトーマの話になると黙り込むし、
一番ソコに足を踏み入れることに怯えてるのは彼自身じゃないでしょうか。
太一にとってトーマはどんな人間だったのか。
ソコをしっかり見直せば……余計に戸惑うだけかもしれませんな(笑)

次回更新は7月17日、来月の第三水曜日。
彼ら彼女らの切ない青春、次なる1ページは誰が書き始めるのか。
毎回毎回精神的に凹まされている気がしますが、
彼らなりの幸せに向かって行ってくれていることを願います。