『灼熱カバディ』第127話(後編) あらすじとネタバレ感想~ライバル対決、ついに決着

裏サンデーにて連載中、武蔵野創さんの『灼熱カバディ』最新話が公開されました。
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第127話 我が為、他が為(後編)
後半戦も残り僅かとなった紅葉対奏和。
攻撃手を押し出し続けるという攻防を繰り広げた両校でしたが、
奏和のエース・高谷によりその均衡は遂に崩れました。
押し出しをすり抜け、紅葉のコート内を駆け回る高谷。
彼を捕えた佐倉でしたが、その右上に違和感が走ります。
先の攻撃で六弦に捕まれた腕。
捕まれながらも全力で引き摺り勝利をもぎ取ったが、その代償は大きく。
高谷を捕え続けることが出来ず徐々に離れていくその腕、
佐倉を冷たく見下ろします。

左手でのキャッチは今しがたの攻防で弾かれた。
必死に考える佐倉でしたが、何とか他のメンバーもその支援に間に合いました。

コート端、横へと押し出すかの様な守備。
そのまま押し出そうとする木戸でしたが、
右藤は高谷の流れに気づきます。

そう、高谷にはその外から帰ることの出来る技術が有りました。
いつかの練習試合で見せつけたあの跳躍。
気付いた右藤が上を塞げと叫びますが、その声に応えるかの様に
高谷の足を掴む影が。

エースの登場に高まる二人。
飛ぶ事も出来ず、このままただ押し倒すだけ。
そう思ったその刹那、あらぬ方向へとその攻撃手は駆け出しました。

二人のキャッチを退け、佐倉の腕を右藤にぶつける形で弾く。
勢い余って誰もいない場所に転がる高谷。
ですが、その口からはキャントが唱え続けられています。
彼は下に潜る技【ドゥッキ】を知らない。
ただ掴んできた佐倉の腕を振りほどくため、
疲労で散漫になった守備の足を使えると咄嗟に判断しただけ。
彼には酸素を有効に取り込み運ぶ力が有った。
疲労度の差は、終盤に大きくプレーの質を左右する。

次の試合の為、英峰は選手控室にいた。
が、そこまでも届く大きな歓声。
ウチは両方勝ってますよねと神畑に尋ねる若菜。
しかしどちらも辛勝だと、厳しく返します。

彼が語るその選手、それが奏和のエース・高谷煉。
間違いなく、頂点の器に値する男。

高谷の攻撃成功により奏和が逆転。
残り一分という土壇場、選手も観客も騒然とします。
1ターンで立場が逆転、これがカバディの恐ろしいところ。
しかしまだ終わりではない、急ぎ攻撃に向かう様右藤は残ったメンバーに檄を飛ばします。

疲労困憊の佐倉たちが見守る中、やはり奏和は紅葉の攻撃を即座に押し返します。
紅葉も同様に押し出しを続け、佐倉たちをなるべく早く戻す作戦に。
約束がある、エースとしての役目がある。
そう考える佐倉に、もったいないと茶化す誰かの声が聞こえました。

高谷に語り掛けられる佐倉。
二人きりの世界でも高谷の態度は変わらず、
楽しみ方はそれぞれだけどと、一方的に話を進めます。
結果を追うも良し、過程を楽しむも良し。
まぁ頑張った分結果が欲しいのが人情だけど。

彼の言葉に、何が言いたいと問いかける佐倉。
高谷は、どう楽しんでもいいけど「義務」だけはダメという話だと返します。

何となく分かる、そういう強さはガタが来る。
強いスポーツマンは自分の為にやっている。
しかし佐倉は、仲間の信頼を、期待を力に変えてきた。
誰かの為に強くなる。誰かへの恩を返す為、誰かの為にエースの役目を果たす。
あの人とした約束を。

自分はどうしたいのか。
確固たる「個」の無い目的を抱き続けてきた佐倉。

試合は残り二秒、ギリギリでコートに戻れた佐倉の攻撃。
自分の意志で自由に、それはそれで大変そうだと考えながら進む脚。
しかし、考える暇すら与えない高谷のタックルにより、
佐倉の攻撃は終わりを迎えてしまいます。

高谷の突進に耐えることが出来ず、後ろに倒れこむ佐倉。
その最後の瞬間、同じ歳のエースに対し零した言葉は、
感謝など微塵も無い一言でした。

予想だにしない言葉に、呆気にとられた高谷。
しかし彼はそんな言葉を言える様になった、
自分本位の言葉を口に出来る様になった佐倉を喜んで迎えます。

奏和57点対紅葉56点。
長く続いた激戦は、奏和高校の勝利で幕を下ろしました。
感想
熱い戦いが続いた『灼熱カバディ』紅葉対奏和。
結果は予想通り奏和の勝利でしたが、2年生のテッペン対決に始まり
伏兵・片桐の登場や右藤の大活躍、
紅葉の成長に佐倉の頂点への到達と
出だしから最後まで激熱でしたね。
どちらかしか先に進めないというのが本当に残念。
押し合い合戦の地獄を乗り越え、暴れだした高谷。
それを捕えた佐倉でしたが右肩には六弦との戦いで出来た爆弾が有りました。
何とか追いついた木戸と右藤、さらに左手すら捨てる覚悟で掴んだ佐倉の覚悟とありましたが、
その状況で高谷は一手上を指しました。
下を潜る技【ドゥッキ】。
かつての合同練習の試合の時に右藤が見せたあの技の応用の様な高谷の動き。

彼自身はただ右藤の身体を使って佐倉を振り払おうとしただけなのですが、
それにより完全フリーになったというのは僥倖というかなんというか。
いつも思うんですどこの間にもずっと「カバディカバディ」言ってるんですよね。
やっぱコイツらおかしいわ(誉め言葉)
逆転を決め、生きている実感を噛み締めた高谷。
彼は遂に佐倉の精神世界にまで侵入を始めます(笑)
「感謝する人間は馬鹿みたいに喜んでやるから恐ろしい」なんて宵越が佐倉に対して言っていましたが、
自分があるかどうかで変わってくるんですよね。
「彼らの為に勝ちたい」のと「彼らの為に『自分が』勝ちたい」というのは同じ様で違う事。
人のためを思うもの大事なことだし良い事なんですが、「自分が」と思えないのであればそれは義務でしかない訳で。
王城の「愛」が最たる例ですよね。
「カバディを愛しているから命尽きるまで楽しみたい」とか自己中の極致ですよ。

勉強でも仕事でも、自分が進んでやることは楽しいんですよね。
学生時代勉強させられてる間なんて苦痛でしかなかったのに
社会人になってSPIとかの勉強を自ら進んでやるとメチャクチャ楽しいんですよ。
理解出来る喜びが半端ない。
「自分がそうしたい」と思えている間は良いのですが、
少しでもその気持ちがブレると人間もう駄目ですね。
佐倉はこれまで王城との約束や、チームメイトからの信頼を軸に戦っていました。
約束の為、信用信頼に応える為、自分は大丈夫だと見せる為。
誰かの為にそうして、何かの為にそうして。
しかしそれは背負ってしまった義務感からであって、望んで権利を掴んだわけじゃない。
自分本位で戦えない人間はいつかガタが来る。
ふと「俺何してんねやろ……」って考えてナーバスになるアレですよ。
まぁ自分本位でやっててもなる時はなるんですけど(笑)

そんな佐倉も遂に、自己中の世界に足を踏み入れることが出来ました。
その一言目が覚えとけよなんてドスの効いた言葉で中々ですわ。
高谷もまた一つ強くなってくれると思ってるのか嬉々として喜んでますしね。
完全覚醒で王城の様に両目が黒くなりましたが、
覚醒するごとに目が黒くなっていくってお前ダルマかと。

この佐倉くんがどれだけ強くなれるかは、見れる機会があるのかなぁ。
この後はブロック決勝戦で能京対脳筋、じゃなくて奏和。
そこからブロック勝利校同士の総当たり戦。
王城・井浦引退後の第2部があれば冬大会まで行くでしょうけど、
物語の主軸は「宵越が世界組に勝つ」だからそこまで物語が続くのもなぁというところ。
大会後に宇宙からカバディ星人がやってきて
「カバディで人間に力があることを示さなければ地球を破壊すると宣言」とかなったら
佐倉もその中に入れそうですけど、マンガが変わってしまうわ。
そんな先のお話も気になるところですが、まずはブロック決勝戦。
以前には1点差で敗北した奏和と、成長した能京のリベンジマッチです。
次回更新は8月20日、お盆を挟んで3週間後。
その時には最新刊のPRとかも入ってきそうですね。
スマホアプリ「マンガワン」では最新話のその先が先読みで公開中。
佐倉と高谷の共通点を語る描き下ろしのちょい足しも有りますので、
ぜひそちらでもご覧ください。