『青のフラッグ』第48話 あらすじとネタバレ感想~彼が彼をどう思いどう想うに至ったか

ジャンプ+にて連載中、KAITOさんの
『青のフラッグ』最新話が公開されました。
最新話はこちらから
前回の感想はこちら
「第48話」
きっかけなんて知らない、気付いたらそうなっていたから。
思い返すのは自分の手を引き走る少年の背中。
野球だってそうだった。
好きになった理由を考えるのは、いつだって好きになった後。

誰への言い訳に?
ある日、クラスメイトが一生懸命何かを描いているのを見かけた。
声を掛けながら覗き込むと、そこには方眼紙をなぞりながら細かく敷き詰められている迷路が。

少年は慌ててそのページを隠し、
抱きかかえて走り去ってしまいます。

別々のグループで関わり合いの無かった二人。
ある日自分たちのグループで盛り上がっていたバトルエンピツを彼は訝しげな顔で見ていた。
が、いつの間にやら彼の手元にも同じものが。

声をかけ、一緒に遊ぶようになった。
祭りに行ったり、スゴロクを作ったり。
いつの間にか親友と呼べるほどに仲良くなっていった。

自分の兄も、彼と一緒に遊んでくれることが多かった。
年齢差もありゲームでも敵わないのに大人げなく全力で煽るものだから、
彼が泣いてしまうこともあった。

その時には、二人にアイスを与え宥めてくれたりもした。
そんな兄も、夢に向かい必死に勉強していた。
いつかの仕返しを考える彼にはそれはダメだと諌めたりもした。

お気に入りのラジコンが壊れた時、
両親は色々と見てくれたが直せなかった。

兄は新しいのを買って貰えと言いながらも、
深夜までその修理方法を調べてくれた。

そして、両親が亡くなった時、
兄は悲しそうな顔をしながらも涙を流さず、自分の頭を撫でてくれた。
辛い時でも、自分の事を気遣い優しくしてくれていた。

ただ、一人悲しむ背中を見ていたから、
何か少しでも助けることが出来ればと思い頑張った。

でも、子供にそれを果たすことは出来ず、
逆に迷惑をかけるばかり。

溢れ返る洗濯機を見て、驚愕する兄。
頭を抱え、頼むから余計なことをするなと、いつも通りいろと片づけを始めました。

良い子にしなくていいから遊んでろ、学んでろ。
野球選手になるんだろ?練習してろ。
そういって全てを背負い込んだ兄でしたが、
一人で全てを出来るわけでもなく。

家の惨状を見た元家庭教師の人が、片づけを買って出てくれた。
でも、それは必死に背負い込んだ兄にとっては迷惑でしかなかった。
余計なお世話だと怒鳴りつける兄。
対して彼女は直にありがとうと言ってあげられないのかと反論。

彼女は彼女なりに、二人の事を思って助けてくれた。
何も心配せず、家の事を考えなくて良い様にと努めてきた兄。
家事を教えてあげるのも保護者の務めなんじゃないの?と諭され、
あなたの役に立ちたいのだと、自分の気持ちも汲んでくれた。
いつしか二人は関係を深め、兄は法律家への道を諦めた。
そして共に過ごす日々が過ぎ、遂に二人が結ばれた。

それを親友に伝えると、彼自身は良いんじゃないかと賛同していました。
既に家の事を色々してくれてるし、姉みたいなものじゃないかと。

しかし自分の懸念は、自分の存在が二人にとって邪魔では無いかという事。
それに対しては彼は否定しますが、あの兄ならあるいはと少し不安げ。

チャイムの音で来訪者に気付いた彼が急いでドアのカギを掛けに向かいますが時すでに遅し。
勢いよくドアを開け入ってくる兄。

彼は兄を必死で留めようと、勢い余って突き飛ばしてしまった。
でも、それよりもと、その手を伸ばして自分を連れ出してくれた。

その時、単純に嬉しくて、でもたぶんそれ以上に何でか
すごく恥ずかしくなって、苦しくなって。
でもその手を、離したくないと思った。

ずっと、その手を握っていてくれた彼。
隣で君が笑うのが嬉しかっただけ。
共に遊び、共に育ち、共に勉強する中で、いつからか隣で笑わなくなった。
それはたぶん自分のせい。

でも自分はズルイから気付かないフリをして、
君は優しいから嫌っていないフリをして。

謝るしか出来ない。
いつからか新しくできた友人たちと笑う姿を見る事しか出来ない。
どうしたらまた、あの頃のように。

そんな頃、彼がクラスの女子を連れてきた。
彼女と一緒なら、また横で笑ってくれるのだろうか。

一緒に映画を見に行った。
お願いした応援団を果たしてくれた。
自分の昔言った夢を、憶えていてくれた。

こうやって一緒に笑えるのなら。
あの日、道路にかけていく君を見て、
気付けば駆け出していた。
でも、そのせいで怒らせた、悲しませた。
自分はただ、皆で一緒に。

一緒に遊び始めた子の、色んな表情を見た。
自分は彼女が思う様な人間じゃない。
心の中には、ごめんという言葉ばかりが駆け巡る。

それでも彼は、再び自分との距離を縮めてくれた。
懐かしいスゴロクの事も、憶えていてくれた。

彼女と付き合うことになって、
二人でいるのをよく見る様になった。
二人に、微笑みかける様に気を付けた。

あの時見上げてきた君も、あの時のように笑ってくれるわけじゃなく。
ちゃんと自分は、君に。

伝えられない思いを込めて作ったお守り。
それは今もなお、太一の元から離れる事なく。

そして、謹慎が解けたその日。
彼は変わってしまったその世界に、自ら足を踏み入れていくのです。

感想
ひと月ぶりの『青のフラッグ』。
これまで心の内を明かしたトーマの周りの人物たちのお話ばかりでしたが、
今回遂に彼の想いが綴られました。

幼い太一の百面相は可愛らしいけどももうね、
とにかく辛い。その一言に尽きる。
これだけの感情を想いを自らの内に閉じ込めて隠して生きていくことの辛さ、
筆舌に尽くし難く想像を絶するものだと思います。
これまでの話の中で出ていたエピソードの集大成というか、
トーマの半生を綴ったような今回のお話。

小学生のころバトルエンピツが元で仲良くなって親友になって、
兄と明希子が結婚した時の家出でその想いが芽生えた。
「恋はいつだって唐突だ」とか「恋はいつでもハリケーン」とか言いますけど、
早熟ながら青春らしいトキメキですよね。
「僕を信じろ」って手を差し伸ばされたらキュンってなりますしね。
あの言葉をアニメで担当した方は全然信じられない人になってしまいましたが(笑)
スゴロクの折とあわせ語られていた家出のエピソード、
太一からすれば「家を出る」というトーマの話にあわせ思い出した一つの昔話でしたが
トーマからすればそれほどの思い入れのあるお話だったんですね。

幼い頃は仲の良い親友。
でも歳を重ね離れていった元友人。
離れていった理由は太一の一方的で卑屈な考えと劣等感からだったのですが、
それ自体もトーマは気づきながら、気付かないフリをしていたと。
まぁあの状態の太一ならしつこく迫ってもその劣等感全開でキレるだけでしょうしね、
トーマとしてはどうしようも無いですわ。
それが何の因果か二葉の登場でまた色づく毎日を送れる様になった。
二人は当初トーマと付き合う為に、というスタートでしたが、
トーマからすればどういう理由であれ彼女をダシに太一と再び関われるようになったのが嬉しかったのでしょう。

にしてもこの太一のイケメンだこと。
夢だったじゃないかと語る彼の横顔がこんなにステキに見えていたんですかね、トーマには。

その他にも色々とトーマ視点のシーンが描かれていました。
親友パワーと立ち上がった太一に、
自分の一言で表情を曇らせてしまった太一に、
道路めがけて走っていく太一に。

よくこの視点で見えたところから追いかけて間に合ったものだ。
だからこそトーマ自身は自分の身体を守れなかったんでしょうけども、
それすらもあの時言った様に、彼の方が大事だったわけで。
まぁその言葉が太一自身を凄く傷つけてしまったんですけど。
二葉に対しても彼女を利用していたようなものですし、
憧れられるような人間でもない。
彼女からの告白には激しく心を掻き毟られていたのかもしれません。

最後の方にはもうグチャグチャになってしまっている彼の内面を表している様で、
こう心臓が捻り上げられる様な切なさを覚えます。
然して、謹慎明けに学校へ行くことを選んだトーマ。
シンゴたち友人らは「彼は彼だ」という結論に至っている様には思えますが、
それでも今までと同じようには扱えない。
親友たちですらそうなら、有象無象の無関係な人間たちにとっては憐憫や嘲笑の的。
いわば対岸の火事ですからね、「世間」にとっては。
変わってしまった世界は彼をどう傷つけていくのか、
次回からが更に不安にしか思えない。
ただトーマ自身も変わりましたから、どう受け止めてどう進んでいくのかは
これから見ものだと思います。

次回更新は10月9日。
間もなくクライマックスな予感もしてこないでもないですが、
終わってほしい様な終わってほしくないような。
スマホアプリ「ジャンプ+」ではそんな『青のフラッグ』を始め、
連載中の作品が全話1回無料で読めるシステムで掲載中。
一回読んだ人もまだの人も、是非1話からじっくりと読んでいただきたい作品です。

今回の話読んでから4話とか5話とか見てみ?もうしんどいから。
特に第5話28ページ辺りからの下り、
太一が思った事がまさしくその時トーマが思っていた言葉なんですよね。
そんな感じで彼の機微や周囲の流れを見ながら見返すともうね、
苦しすぎて心臓が痛くなるので是非(笑)