『十二大戦』コミカライズ版 第29話(最終話) あらすじとネタバレ感想~散って行った戦士たちの願いと、勝ち残った戦士の思い
ジャンプ+にて連載、西尾維新さん原作/暁月あきらさん作画
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第二十九話【子丑寅卯辰巳午未申酉戌亥】
第十二回十二大戦優勝者、『子』の戦士・寝住。
彼の持つ能力【ねずみさん〈ハンドレッド・クリック〉】により
彼だけが経験した、確率世界。
そこで聞き、知った、戦士たちの願いとは。
街中を一人駆ける寝住。
『皆殺しの天才』から逃げる為走っていると、
建物から出てきた戦士と偶然鉢合わせに。

その出会いにより、プライドの高い『亥』も
『丑』相手に単独では難しいと考えている事を知った彼は、
相談の末に共闘の道を選んだ。
大あくびをしながら、分岐した世界の話をナビィに話し始めた寝住。
本当は消滅させた分岐については他人に話しちゃダメなんだけど
この分岐も消せばまぁ良いかと楽観視し、
出会った戦士たちの話を続けます。
『亥』の戦士・異能肉。
前回優勝者の娘にして、彼氏が12人いるという愛多き女。
彼女の願いはいたってシンプル。

まぁ結局その後、二人して
『丑』に殺されるんだけども。
自らの死を思い返す寝住。
その話を聞いたナビィは
「愛が欲しい」なんて、
彼女はずっと偽物の愛に囲まれていたのかもしれませんね。
とキレイにまとめてしまいました。
そこまでは分からないと、
寝住はあくびしながら答えます。
そう考えるとあの戦士は、
愛し愛される存在が居たってことか。
と、寝住が次に思い浮かべたのは『戌』の戦士・怒突。
彼から聞いた身の上話。
それは幼女を養女にしたというよく分からない内容。
成り行きでそうなったと話す怒突は、
自らを児童ブローカーだと告げます。
信用第一、納品後のケアもバッチリ対応。

親元に返してあげれば?と返す寝住ですが、
両親ともとっくに死んでるそう。
施設に連れて行くも、彼女が選んだのは
自らを救ったヒーローなのでした。

図らずも未婚の父となった訳だが、
自らを必要とする存在が居るってのは、案外悪くない。
照れを隠すかの様に背を向けながら、怒突はそう話します。
養育費を稼ぐためにも勝たなければならない。
今日だけじゃなく、明日も明後日も来年も再来年も。
拳を握りながら、彼はその願いを口にします。

あの半裸のおねーさんも、手段を選ばず勝とうとしていたな。
と、次によぎったのは『酉』の戦士・庭取。
掌に付いた血を振り払いながら
ドーピングしてもらえて良かったと、
自ら顔を握りつぶした相手に感謝を述べる庭取。

俺はいいやと遠慮する寝住は、
そんな得体の知れない薬使って大丈夫?
と気を遣います。
が、こうでもしなきゃ優勝出来ないと笑って答える彼女。
その答えに、そーまでして叶えたい願いとは?と
更に問いを重ねます。
願いを聞かれた庭取は、あれもそれもこれもどれもと
まとまっていない様子。
最終的には、寝住君決めてくれない?と
こっちに投げてきてしまいました。

まぁ、最終的にはそんな彼女に後ろからブスリと刺されたんだけど。
と、寝住はまた一つ、自分の死を思い返すのでした。
そういえば、と話を変えるナビィ。
『申』の必勝法とは何だったのか、と。
どの分岐でも、それを知ることは出来なかったと告げる寝住。
ハッタリだったのかなとぼやきますが、
あながちそうとは言えないかもしれないと、ナビィが答えます。
あの平和主義者が十二大戦の裏事情を知っていたと仮定するのなら、
優勝後に主催者サイドと交渉をしていたのかもしれません。
裏事情?と尋ねる寝住。
突っ込まれた、話過ぎました忘れてくださいと
慌てて話を終わらせるナビィ。
寝住は眠たさからか、余り話を深く広げる気が出ない様です。

そのルートは俺が消滅させてしまってるんだけどと
セルフツッコミをしながら、
優勝出来たのは彼女のおかげだと、改めて話を続けます。
『未』のじーさんの持ってる爆弾で、
操られた私の死体を殺してくれと頼まれていた。
実際、彼女の言っていた通りだった。
彼女の言葉と姿を思い浮かべ、目を閉じる寝住。

対して『未』のじーさんは分かりやすかったと、次に移動。
彼が口にした願いは不老不死。
歳を取ると、若さがどれだけ大切か身に染みて理解した様です。

100の分岐の中では、『卯』と手を結ぶパターンも有ったと言い出し、
突然の発言に思わずブレーキを踏んでしまうナビィ。
そう、あの最凶最悪の【死体作り〈ネクロマンチスト〉】。
彼との出会いは、無人のスーパーだった。
食料調達に物色している中、チーズコーナーに差し掛かった寝住。
思わず頬張り、その美味しさに至福の表情を浮かべます。

そんな彼の背後から、覗き見る目線が一つ。

動かず、睨み続ける彼に対し、
寝住は思い切って声をかけてみました。

その言葉に、笑顔になる憂城。
思わぬ形での意気投合。
なんでも彼は、今まで一緒に何かを食べられる友達がいなかったらしい。

上手く行くかと思えた分岐でしたが、
寝住のミスで『午』に二人して殺されてしまったとの事。

分岐全てをはっきり憶えている訳じゃないが、
あの分岐は強烈に印象に残っている。
思い出を噛み締める様に、話す寝住。
そして、対して『午』は今回パッとしなかったが、
攻撃が通じないのがヤバかったと寝住は感想を述べます。

そんな彼の願い、もうその防御力がそれだと思う物でしたが、
彼の求める物は更なる高みだったのでしょう。
話の流れで、素朴な疑問を投げかけるナビィ。
あのバリケード、どうやって入ったんですか?
少し言い淀んだ寝住でしたが、
100人でスキマを探したと、人海戦術だった旨を暴露。
続けて話は『辰』・『巳』の戦士・断罪兄弟へ。
一応聞いてみたが、予想通りの答えだった。

噂通りの二人だと辟易する寝住でしたが、
その後の話で思いもよらぬ返答が。

そんな彼らの願いも、
その言葉に則したものでした。

何も欲しくないのに何故参加したのか。
ナビィが新たに抱いた疑問ですが、
強制参加だからだと寝住は変わって答えます。
寝住自身、100通り試したが
大会参加を避ける事は出来なかった。
単に失敗経験が100倍になるし、
改めて自分の無力さを痛感するだけ。

こんな能力、ジャンケンくらいにしか使えないのさ。と、
自身の能力を過小に評価します。
今回の分岐では関わらなかったが、
『寅』と共闘するルートも有ったと寝住は続けます。

案外悪くなかったが、
やっぱり『丑寅』コンビの方が強かった、『鬼』強い。
と、彼らの共闘を思い返します。

弱そうに見えて、とんでもない実力派だった彼女。
面食らって寝住も聞いてみたそうですが、
彼女らしい持論が返ってくるのでした。

そんな彼女を看取った『丑』。
噂通りの強さを誇る彼にも同じ様に
願いを聞いてみたのだが、結局答えを聞く事は出来なかった。

あの天才が欲しがっていたもの。
思うに、背中を預けられるような信頼出来る相棒じゃないか。
と、寝住は考えます。

振り返ると砂粒以外ろくでもない奴ばかりだったけど、
話してみると意外と話せたりして、
わけ分かんなくなると口にする寝住。
願いもみんな普通というか、ありふれてる、慎ましい願いで。

指定したポイントに到着するまで話は続き、
ナビィともお別れの時間に。

皆様の願いを「慎ましい」と仰った寝住様が、
どの様な壮大な願いを望まれるのか、私としても楽しみにしております。
と、笑顔で告げるナビィ。

しかし、今までもそういう経験は有った。
戦士たちがデジャビュのように感じていた、分岐の記憶の残滓。

別に問題ないだろうと判断した寝住は、
返事をして立ち去ります。

そして翌日、彼にとって戦場と全く地続きである学校に向かった少年は、
100の人生を同時に生きながら考える事になるのでした。

感想
遂にやってきました最終回。
みんなで笑顔でキメッ!していた戦士たちと
優勝者・寝住との邂逅の分岐のお話でした。
皆、傍から見ると慎ましく、命を賭ける様な事なのかと
問われてしまうような願いを抱えていました。
寝住が「慎ましい」と評したのもそう思えるのでしょうが、
当人たちにとっては、命を賭けるに値する願いだったんでしょうね。
とりあえず憂城さんはその服装なんとかすれば
生きているお友達も出来ると思うなー(笑)
にしても、憂城さんの満面の笑みとか、
断罪兄弟の金に対する価値観とか、
寝住だけが知る本当の彼らという所でしょうか。
100の分岐で知ってしまっただけに、辛いものがありそう。
関係ないし超今更な気もしますけど、
「断罪兄弟・辰巳(たつみ)」だから「TOUCH ME!!(タッチミー)」なんですね。

「相手がザクなら人間じゃないんだ」とガンダムのセリフも有りますが、
「割り切れよ、でないと死ぬぜ」というセリフも有りました。
相手に対し親近感を得れば得る程
殺そうとするのは難しくなるでしょう。
殺し合いが大前提の中、
その相手たちと関わる可能性を増やすこの能力は、
確かに地獄と呼ぶに相応しいかもしれません。
どう告白しても振られるってのも含めて(笑)
最後【醜怪送り】を投げた時に会話をしたのは失井とだけでしたが、
寝住には全員に対し思うものがあったんでしょうね。

にしても、憂城さんの近寄り方が凄く良いわ。
ある意味想像していた通りのキャラクターでした。
お友達を増やしたい、ただそれだけの為に、
「お友達」を作っていたんですね。

彼が知った戦士たちの願い、そして彼らが背負う物。
それを踏まえ、一体何を願うのでしょうか。
っていう願いの話が『大斬-オオギリ-』に載っているんですかね?
「漫画読み終わるまでネタバレとか見ない!」って決めてたので、
ココから原作読んでアニメ見て、
何なら『十二大戦対十二大戦』なんて
タイトルだけ見せられてスゴく気になる続編の様なものも見て、
と思っていましたが、一体何から手を付けたモノやら。
まずはマンガ繋がりで
『どうしても叶えたいたったひとつの願いと割とそうでもない99の願い』
から見るべきかしら。タイトル長いな。
あと最後寝住を家に送ったナビィさん、
何か分身的な能力持ってたり、消滅させた分岐の記憶を保持していたり
色々と本編中の頼りなさからは想像出来ないスペック持ちの様ですが、
彼はまたどこかの西尾×暁月作品で活躍したりするのでしょうか。

そんな気になる点もいくつか残ったままの最終回…
これは「7月4日発売の単行本を買え」という事ですな(笑)
何はともあれ、戦士たちの生き様、戦い、楽しませて戴きました。
西尾維新さんと暁月あきらさんのコンビでの新作、期待しています。
一年弱にわたる連載、お疲れ様でした。
…この作品が好評なら
『十二大戦対十二大戦』もコミカライズするのかしら。
という期待を込めて、敢えて読まないで待つ方が良いのか。
とりあえずは原作とアニメを見てから考えることにするさ。
スマホアプリ「ジャンプ+」では、遂に最終回を迎えた
『十二大戦』のコミカライズされた激闘が全話配信中。
アニメから入った人も原作の読者さんも、
コミカライズとの違いを探しながら見て戴くのも一興かと思います。